『DEAD CAN DANCE/AION』

velvet-moon2005-03-08

デッド・カン・ダンスの1990年の5thアルバム。まだバンド形態としてのドコドコとした暗黒感覚に溢れていた1stから今もずっと大好きだと言える。80年代の「4AD」は英国の最も好きなインディー・レーベルだった。その最も好きな時期の「4AD」はコクトー・ツインズとこのデッド・カン・ダンスが主軸だったと思う。

初期のゴシック感覚からさらに民族音楽古楽に至る中世の空気が強化されていった。徐々にブレンダン・ペリーとリサ・ジェラルドの2人の世界は深まって行く。個人的にこの作品がリリースされた頃、ある重圧と葛藤の時期でもあった。そんな中、この作品を聴きながら辛うじて祈りと心の平静さを保つ事が出来た。ある人生の過渡期に一緒に居てくれた音楽は忘れられない。

あまりにもヨーロッパの匂いが強いのだけれど、出身はオーストラリアのメルボルン。そして、イギリスに渡りアメリカ...と活動の場を広げていく。それも全くスタンスを崩す事無く、商業主義に陥る事無く、独自の道をゆっくりと(その間、ソロ作品もある)。リサ・ジェラルド(リサ・ジェラード)は麗しい美貌の持ち主、ブレンダンもまるで貴公子の様な佇まい。しかし、彼らはジャケットにはご自分の容姿ではなくあるシンボル的なものや絵画などを使う。この「AION」のジャケット・デザインは23Envelopeではなくブレンダン自らが担当している。この絵画はヒエロニム・ボス(ボッシュ)の作品が使用されている。フランドル(ネーデルランド)のルネサンス〜ゴシック派の画家である。

ヴォーカルも大体半分ずつ位を担当する。彼らに比較出来るグループが見当たらない。ジャンルも難しいけれど、ゴシック〜クラシカル・ロック〜チェンバー・ミュージック...という様な音のファンの方には気に入って頂けるかもしれない。私は生理的に苦手な音もあるけれど用語化したジャンルに偏見を持ちたくはないと思う。何故なら、雑音(ノイズ)から音楽は生まれたのだから。ロックにもこの様な独自の世界を追求している人達が実は世界中に存在する。それらの音楽に巡り会う度に喜びを感じるのである。

[2002] DEAD CAN DANCE ★ AION